狼と香辛料Ⅱ 第10話「狼と孤独な微笑み」
五十人会議で毛皮は外地商人に売られる事が決定した。
大量の毛皮を買い占めれば、大きな利益を得る事が出来るが、ロレンスにはそのための資金が存在せず、この町に金を貸してくれる知人のいない。
町の毛皮商売はもはや限界に来ていた。
少しでも早く、多くの毛皮を買い占める必要があった。
エーブ・ボランはそのために、ホロを貴族の娘として売ればいいのだと主張する。
フォン・イーターゼンテル・ボランという爵位を持っている没落貴族だった。
彼女自身も過去に売られた経験があるらしい。
本当に売るわけでなく、万が一の担保にするのだという。
ロレンスはホロを担保にするというリスクを背負っていますが、発案者であるエーブはロレンスに比べるとリスクが少ない気もするよね。ロレンスから借金を受けることぐらいか。莫大な借金ではあるのだけど。
最大の焦点はロレンスにとってホロを失うかもしれないほどの見返りがあるのかどうか、というところだろう。
アロルド・エクルンドは交換条件として、自分が旅に出るためにこの宿をロレンスへ差し出すと提示する。
ホロはそれはロレンスの店を持つという夢に近づける事だという。
これまで商売に近づくのも嫌っていたホロの変化に戸惑うロレンス。
ロレンスは今までは危険な取引もまずは引き受けて、相手が騙そうとしているならその裏をかこうとしてきた。しかし今は守りに入ろうとしている。それはホロを質草にするという事。
それだけホロが大切であり、万が一を考えて二の足を踏んでしまうのだろう。金銭的なものなら破産するかもしれない賭けに乗るのは自分が痛手を負うだけだけど、今回の場合はホロを失うのはロレンスにとってもホロにとっても大きな問題だからな。特に精神的に。
これで迷わないような鬼畜なら一緒にいない方がいいというものだ。
それに今回の話が罠という可能性も抱えていた。
ホロはロレンスを叱咤して相手が騙そうとするなら、その裏をかけばいいのだと笑う。
エーブの話は確証があるわけではなく、彼女が騙そうとしているならそれも逆手に取れいうお達しですが、それが上手く行くという保証もないのだけど。
逆にホロはそれだけロレンスを信用しているという事の表れでもあるのでしょうが。
ロレンスは教会の側にいる浮浪者から金を渡して教会の情報を入手する。
男によれば、教会の司祭はパンも多くばらまくが、それ以上に教会は商人たちと思われる相手に対して金をばらまいていた。
教会に近づいても搾り取られるだけで、教会と親しくしていたのは最近大げんかしたエーブだけだったという。石像を扱っていたエーブだが、男は彼女が本当に扱っていたのは塩である塩商人だろうと見抜いていた。石像の隙間から品質があまり高くない塩がこぼれていたのだ。
エーブの情報の裏を取りに回っているのですね。
流通が今ほど発達していない時代では、塩はかなりの貴重品であり、高価な物品。たとえ質が悪いとしても相当の根で取引されるものでしょう。
この塩というのがロレンスにとって起死回生のネタとなるのだろうか。
リスの尻尾を扱う店の看板娘ヘレーナの下へやってきたロレンス。
彼女から五十人会議が毛皮を売って良いことになり、ツケは利かないらしいと話す。
教会について触れようとすると、慌ててロレンスを店の中に引っ張り込んで周りの様子をうかがうと深く関わらない方が良い指摘する。権力闘争が行われている教会。
教会に目をつけられたらこの町にいられなくなる。
ヘレーナがロレンスに特別にこんな話をするのは、女持ちだから。ロレンスは一人でいるとそうではないが、他に女がいると判ると、ちょっかいをかけたくなるタイプなのだと語る。
確かに男は結婚したらもてるようになる事がありますね。
隣の芝生がよく見えるのか、結婚した事で余裕が出来るからなのかなは判りませんけど。
女とのやりとりを包み隠さずホロに話したロレンス。
教会の目的がこの町に司教座という教会組織の要を置くことだとよんでいた。
絶大な力を持つ教会と喧嘩別れしたエーブが町を去りたがる理由は判るが、彼女が何故喧嘩したのかは判らない。
大きな商売をする時は少しでも情報が欲しくなるのだとホロの考えを利くロレンス。
ホロと二人きりの宿では気を張らなくなったロレンス。
最初の頃はそうではなかったが……
釣った魚に餌をやらないのか、というホロに、勝手に乗り込んできたのだから乗り珍を払って欲しいぐらいだ、というロレンスの受け答えにホロが目を見開く。
軽い冗談の筈のやりとりのつもりが奇妙なホロの反応。ホロが考えていたのとは違う反応をしたということなのか。
初心を忘れるなという事だと、いうホロ。
旅を続けてきたからロレンスの手を握れるのだが、何時までも出逢った時の気持ちでいたいと詩人も歌っていると語る。
調査の結果、エーブの話は真実だと考えたロレンス。だがエーブが喧嘩別れをした理由を尋ねる。
大司教を目指すこの町の司教は金儲けをしようとしていたが失敗続き。そこに取り入ったエーブは別の町の司教との繋がりを利用して、石像の売買による商売を行った。
だが、基盤が固まってくると、エーブも切ってしまったのだという。
これから大きくなる商人より、既に大きな商会を相手にした方が良いからだ。
それで大喧嘩となったわけだ。
もちろん彼女の話した理由が真実だ、という確証は何処にもありません。
気になるのはエーブが自分が教会との商売に塩を扱っていた事を黙っている事だろうか。
わざわざ仏像に隠して塩を運んでいた、というのは知られまいとしていたからでしょう。そんな秘密を知るエーブを切るというのは相当に危険な事だと思われるのだけど。
まだ話はそれだけではないという可能性があるかな。
彼女の家が没落した事と何か関係があるのかな。
提案をのむロレンスに握手するエーブ。
ホロはエーブの手が震えていた事を語る。
ロレンスはそれを緊張していたのだと考えるも、ホロは他の何かを感じ取っていた。
ホロを最低でも金貨1500枚になると語る。
エーブの震えの意味は何なのか。
売られた経験がある身として怯えているにしても、まだ担保段階だから別に完全に売られる訳でもないので……
これから交渉する相手が実は何か因縁があるのか。それとも……
次回 第11話「狼と別れの決意」
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